多様性がもたらす学び:探究的な学びの土壌づくり

 純真高校では、探究的な学びの土壌をより豊かなものとすべく、国際交流の活性化やSSDSEを用いたデータの利活用に着手しています。 
 国際交流の活性化は、学びに多様性をもたらすためです。そもそも、探究とは正解のない時代において最適解を更新し続ける営みのことです。そこで取り扱われる問題は、複雑に絡み合っており、単一的な見方・考え方では解決することができません。より多くの見方・考え方を総合しながら模索していく必要があります。その意味で、多様性の担保は探究的な学びの土壌となるのです。純真高校において、協働的な学びを重視していることもそこに付随します。

複文化主義的なあり方

 さらに言えば、人との関わりの中だけでなく、自分の中にも多様性を認めていく複文化主義的な考え方も重要となってくるでしょう。複文化主義とは、自分の中には複数の文化が共存していると捉える見方のことです。例えば、アメリカで育った父と日本で育った母をもつ場合、アメリカの文化と日本の文化が、何らかの形でその子の中に存在していると考えられます。家の中で靴を履くか履かないかなど、アメリカと日本の文化では「正しさ」が違うところもありますから、その子はところどころで矛盾する二つの文化を内面に抱えていることになります。固定的なアイデンティティ(自己同一性)に拠って考えていくと、それらの中に共通点や法則性を見出し、折り合いをつけていく必要があります。一方、複文化主義は、無理に共通点を見出そうとせず、自分の中には複数の文化、即ちものの見方・考え方があるのが当然と考え、自分を構成する一つ一つの文化を尊重しようとするのです。もっとも、個人がもつ文化は親に限られているわけではありませんから、実際には自分の中にある様々なものの見方・考え方を大切にするということになります。
 そのように考えてきた時に重要となってくるのが、他者という存在です。自分の中の様々な文化、つまり多様性を大切にするということは、自分の中の他者を大切にするということに他なりません。それらを認めていくことは、他の人を認めることとつながっているのです。
 もっとも、別々の個が別々の場で頑張っても議論は生まれません。他者と議論するためには、共通の場が必要となってきます。そこで重要になってくるのが、SSDSEという同じデータセットを使って授業を進めるという仕組みです。そのことについては、別のところで述べようと思います。

生徒の挑戦・教員の挑戦

 実際に異文化に飛び込み、肌で多様性に触れるリアルな体験は、生徒たちの中に新たな見方・考え方を育むことに違いありません。インターネットで様々なことを瞬時に見ることができる時代だからこそ、そうしたリアルな体験に価値があるのではないかと考えています。その意味で、本校の生徒が早速チャレンジしてくれたことを大変嬉しく思っています。
 本校の生徒が、早速、挑戦してくれたのは「福岡県私立高等学校生徒アジア派遣研修事業」です。
 このプログラムにおいて、生徒たちは令和8年8月、アジアの熱気と急成長の只中にあるベトナム社会主義共和国(ハノイ市)を訪問します。単なる観光や語学研修にとどまらず、現地の家庭でのホームステイや学校での授業体験、現地の歴史・文化施設の見学、さらには日本大使館や現地日系企業、日本人留学生との交流など、多層的なプログラムに挑みます。
 現地での体験は、これまで自分が疑いもしなかった「当たり前」や「正しさ」を揺さぶるものになるはずです。文化や価値観の相違に戸惑い、葛藤する経験こそが、まさに「自分の中に新たな文化・視点を獲得していくプロセス」に他なりません。
 さらに本事業の大きな特徴は、夏のベトナム派遣だけで完結しない「双方向の交流」にあります。派遣された生徒たちは、同年10月、今度はベトナムからの生徒を自らの家庭にホストファミリーとして迎え入れます。 「異文化の中に身を置く立場」と「異文化を迎える立場」の両方を経験することで、相手の背景を尊重しながら、国境を越えた「仲間」として協働する国際性が培われます。
 事前・事後の研修や報告会を通じ、自ら問いを立て、仲間と議論し、自発的に行動することが求められるこの研修は、まさに本校が目指す「探究的な学び」の実践そのものです。データという「客観的な知」と、アジアでの体験という「体感を伴う知」の双方を行き来しながら、純真高校の生徒たちは、複雑な世界を生き抜くためのしなやかな多様性と国際性を身につけていきます。
 生徒に負けないよう教員の海外派遣についても準備を進めております。生徒の挑戦と教員の挑戦をあわせて、純真高校の中により豊かな探究の土壌が形成されていくよう努めて参りたいと考えておりますので、今後とも宜しくお願い致します。



佐藤真久先生(東京都市大学大学院 環境情報学研究科 教授)によるコメント

 社会の多様性というと、文化的多様性(多文化)という言葉として使われるケースが多いなかで、純真高校では、自身の中の多様な文化を大切にする取組(複文化)を実施、展開しています。他者を外部に置くのではなく、自身の中の他者を大切にすることは、他の人を認めることにもつながっていくことでしょう。
 従来のような、実際に生徒らが異文化に飛び込み、肌感覚で多様性に触れる経験(体感を伴う知の構築)も大切にしながら、自身の多様性にも気づいていく。そんな取組に、社会的包摂とウェルビーイングの接点を見いだすことができます。
 さらに興味深いのは、SSDSE(教育用標準データセット)を併用することを通して、生徒どうしに対話と探究を促す言語活動のプラットフォームを構築している点(客観的な知の活用)に特徴が見られます。
 また、生徒の多様性のみならず、教員の多様性も、豊かな探究の土壌を生み出すことに繋がっていくことでしょう。多様性を活かす純真の探究活動、生徒の挑戦、教員の挑戦を応援していきたいです。

投稿者プロフィール

宗 新悟
宗 新悟教頭 兼 高校魅力化推進部部長 男子バスケットボール部顧問
 前向きになれる、好きになれる学校づくりができるように日々努めています。小さい頃は勉強が好きで、バスケットボールに出会ってからは、ずっとバスケットボールをしていました。教員になる前に、学問の世界に飛びこび、学問の魅力に再度取り憑かれました。勉強でもスポーツでも、やらされるものだと結局上達しませんし、身につきません。

少しでも前向きになってもらう、少しでも好きになってもらう、あるいはもっと前向きに、もっと好きに。

そんな学校であるために、これからも頑張ります。