探究- 純真高等学校(福岡市)

探究とは?? #4 実践例 - Inquiry-Based Learning

探究を探究する

探究ないし探究的な学びの捉え方

 探究とは、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」というプロセスの中で、生徒の主体性・協働性を育む学習と言われます。
 「探究的な学び」は、「総合的な探究の時間」や「探究」と名のついた科目だけで行うものではありません。その他においても重要視されています。そこで今回は、文科省が推める「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」というステップに沿って、実践例を記したいと思います。

各教科における探究学習

 各教科には、「単元」や「単元の目標」など「教えること」があります。そうであるならば、「構造化された探究」が基本的な枠組みとなるでしょう。その中に、ミニ探究として「導かれる探究」などを入れていくと、より効果的になると考えられます。

国語科における探究学習の実践例
- Structured Inquiry -

1. 課題の設定(教員)

目的: 探究するテーマや問題を明確にする。

  • 1-a.課題の設定:「遠近法って、大事なの?」
    • 疑問をもとに課題を設定します。
      • ミニ探究「遠近法では、遠くのものはどう描く?近くのものはどう描く?」-Confirmation Inquiry 確認するための探究-
  • 1-b.仮説の設定:「遠近法は、大事である」
    • 問題に対して予測や仮説を立てます。
  • 1-c.証明方法の設定:「言語学(国語)的なアプローチ -『はじめての構造主義』というテクストを読む- 」
    • 仮説を証明するための方法を具体的に考え、設定します。
  • 1-d.目標の設定:「遠近法の重要性を理解し、クラス内で発信する」
    • 探究の目的や目標を明確にし、どのような成果を目指すかを決めます。

2. 情報収集(教員)- [1-c.証明方法の設定]

目的: 課題に対する答えや解決策を見つけるために必要な情報を集める。

  • 2-a.情報源の設定:「共有された書籍の抜粋」
    • 図書、インターネット、インタビューなど、どこから情報を収集するかを決めます。
  • 2-b.資料の収集:「橋爪大三郎『はじめての構造主義』の抜粋というテクストを、Google Classroomで確認する」
    • 具体的な情報を実際に集めます。信頼性の高い情報源を選ぶことが重要です。
  • 2-c.記録:「電子データとしてGoogle Classroom内に保存」
    • 収集した情報を適切に記録し、後に参照できるよう整理します。

3. 整理・分析 - [1-c.証明方法の設定]

目的: 収集した情報を整理し、分析することで、課題に対する理解を深める。

  • 3-a.情報の分類(教員):「1.中世の宗教画2.ルネッサンス期の絵画、3.遠近法という客観的な技法、4.視点の誕生ー主体・客体ーに分ける」
    • 収集した情報をテーマやカテゴリーごとに分けます。
  • 3-b.データの整理(教員):「ステップごとに分けて、小さな問いを付したGoogle Formを作成」
    • 分類した情報を整理し、見やすい形にまとめます。
  • 3-c.データの分析(生徒):「教員が設定した小さな問いについて考えながら、筆者の主張を読み解く」-Guided Inquiry 導かれる探究-
    • 整理したデータを分析し、パターンや傾向を見つけます。
      • 1.中世の宗教画
        • 人間はどれ?
        • 「価値のある」もの?「ない」もの?
        • 中世の宗教画の特徴は?
      • 2.ルネッサンス期の絵画ー遠近法のはじまりー
        • 遠近法は、英語で何ていう?
        • 遠近法の教科書が出るということは何を示しているの?
      • 3.遠近法という客観的な技法
        • 遠近法って、どんな技法?-「デューラーの透視図法」という挿絵-
      • 4.視点の誕生ー主体・客体ー
        • 「「見える通りに」描く」ということが示すのは?
          • [クイズ ] どこから見た写真?(ミニ探究-確認のための探究-)
            • 校内の写真を提示し、どこから撮られた写真なのか考えます。
          • どうして、クイズの答えが分かるの?(ミニ探究-確認のための探究-)
            • 写真から、撮っている場所(視点)が分かることを経験的に学びます。
        • 「世界は、物体(オブジェクト)(=客体=客観)の集まりである」?
        • 改めて、「「見える通りに」描く」という遠近法が教科書になるということが意味するのは?
  • 3-d.仮説の検証(生徒) - [1-b.仮説の設定]:「どうして遠近法が重要と言われているのかまとめる」
    • 分析結果を基に、仮説を検証します。
  • 3-e.結論の導出(生徒):「近代的なものの見方に関わるという意味で遠近法が重要と言われていることを理解する」
    • 分析結果をもとに、明確な結論を導き出します。

4. まとめ・表現(生徒)

目的: 探究の成果をまとめ、他者に伝えるための方法を決める。

  • 4-a.成果のまとめ:
    • モデル
      • 問い - [1-a.問題の設定]
        • 「遠近法って、大事なの?」
      • 主張 - [3-e.結論の導出]
        • 「遠近法は重要である」
      • 理由 - [3-d.仮説の検証]
        • 「近代的なものの見方に関わるから」
      • 方法(リソースの使い方)- [1-c.証明方法の設定]
        • 「言語学(国語)的なアプローチ -『はじめての構造主義』というテクストを読む- 」
          • 確認する方法、再現性を示す。
      • リソース(使用したデータ)- [2-b.資料の収集]
        • 「橋爪大三郎『はじめての構造主義』の抜粋」
          • 確認するためのデータ、再現性を示す。
    • 分析結果や発見を整理し、明確な結論を導きます。
  • 4-b.発表方法の選定 - [1-d.目標の設定]:「Google Slideで、図やイラストを用いた注釈を入れながら資料を作成する」
    • レポート、プレゼン、ポスターなど、適切な表現方法を選びます。
  • 4-c.発表 - [1-d.目標の設定]:「作成した資料をプロジェクターで投影し、クラス内で共有する」
    • まとめた成果を他者にわかりやすく伝えます。視覚に訴えることも効果的です。
  • 4-d.リフレクション:「発表の様子を記録した動画を視聴し、作成した資料や自らのパフォーマンスについて振り返る(共有されたGoogle Form)を使用」

探究 x 探究

 このように「遠近法って、大事なの?」という素朴な問いでも、探究的な学びを行うことはできます。こうした学びの後に、「開かれた探究」をかけ合わせても面白いかもしれません。あるいは、同じ問いについて、他教科という別の方法で考え、言語学的なアプローチによってでてきた答えと総合する、そういう教科横断も効果的かもしれません。
 主体が複数いることに注目しても面白い…訳語の問題から、英語と教科横断しても効果的…探究に探究をかけ合わせることで、探究はより深い学びへとつながっていきます。

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