探究と言っても色々ある!
一口に探究と言っても様々です。Heather BanchiとRandy Bellの「The Many Levels of Inquiry」(Science and Children, v46 n2 p26-29 Oct 2008)では、次のように示されています。(訳はChat Gptを参考にしました。)
1 - Confirmation Inquiry 確認するための探究
Students confirm a principle through an activity when the results are known in advance.
生徒は、事前に結果が分かっている活動を通じて、その原理を、確認します。
2 - Structured Inquiry 構造化された探究
Students investigate a teacher-presented question through a prescribed procedure.
生徒は、教師が提示した問いを、決められた手順に従って、検討します。
3 - Guided Inquiry 導かれる探究
Students investigate a teacher-presented question using student designed/ selected procedures.
生徒は、教師が提示した問いを、生徒自身で設計または選択した手順を用いて、検討します。
4 - Open Inquiry 開かれた探究
Students investigate questions that are student formulated through student designed/selected procedures.
生徒は、生徒自身で考えた問いを、生徒自身で設計または選択した手順を用いて、検討します。
Heather BanchiとRandy Bellの分類に沿って考えても、探究は1つではないことは明白でしょう。また、同書には次のことも書かれています。
Teachers sometimes believe that in order for students to be engaged in inquiry- oriented activities they need to be designing scientific investigations from scratch and carrying them out on their own. This simply isn’t true. Elementary students cannot be expected to immediately be able to design and carry out their own investigations. In fact, most students, regardless of age, need extensive practice to develop their inquiry abilities and understandings to a point where they can conduct their own investigation from start to finish. Luckily, there are many levels of inquiry that students can progress through as they move toward deeper scientific thinking.
教師は、生徒が探究指向の活動に従事するためには、自ら科学的調査をゼロから設計し、独力で実施する必要があると考えることがありますが、これは事実ではありません。小学生が即座に自ら調査を設計し実施できるようになることは期待できません。実際には、年齢を問わず、ほとんどの生徒は、探究能力と理解を深め、自らの調査を開始から終了まで行うことができるようになるまでに、広範な練習が必要です。幸運なことに、生徒がより深い科学的思考へ進むにつれて、探究のさまざまなレベルがあります。
要するに、初めから所謂「探究」と言われるような「開かれた探究(Open Inquiry)」を行っても、できないのは当然であること、むしろ、探究と一口に言っても様々なレベルがあることを自覚し、生徒の状況に応じたレベルの探究を行っていくべきであることが示されています。
探究 x 探究
以上のようなHeather BanchiとRandy Bellの発言や分類は、示唆に富んでいます。各教科には、各科目において「教えること」があります。生徒が自分たちで考えた問いを、生徒自身で設計または選択した手順を用いて、検討する「開かれた探究(Open Inquiry)」のみに終始してしまうと、生徒の興味・関心の向く方に議論が進むため「教えること」を教えられない可能性があります。そこで、重要なのが、「構造化された探究」や「導かれる探究」です。これらは、教師の発問によって、議論が進んでいくため、教師は「教えること」を確実に教えることができます。また、それまでの前提知識を「確認するための探究」も単元のはじめ等には特に必要でしょう。また、「教えること」を教えた後には、よりその内容を深めるために「開かれた探究(Open Inquiry)」を行うことができれば、より効果的なはずです。
このように見てくると、一つの単元というのは、様々なレベルの探究がかけ合わさったものと見ることができるのです。探究のレベルは、何も生徒の状態に合わせるだけのものでなく、単元の基礎から応用に至るまでの流れを整理し、探究的な側面を強調した授業を構築するためにも必要な見方だと考えています。