私たちの「目指すべき星」の見つけ方
令和6年7月1日、前回に引き続き、東京都市大学大学院 環境情報学研究科の佐藤真久教授を講師にお招きし、今年度2回目となる職員研修を実施しました。
1年間に4回行われる職員研修。第2回と第3回の目標は「教職員全員で純真高校の目指す未来像をつくり上げること」です。
今回の職員研修にてワークショップとして行ったのは「純真高校未来共創新聞作り」です。今から5年後というそう遠くはない未来の2029年7月1日、純真高校が未来の新聞の一面で取り上げられるとしたら、どんな学校になっているだろう?という未来を想像し、架空だけれども、「こうなってほしい」という思いを込めて新聞を作ります。
今回佐藤先生が職員研修の手法の一つとして「未来共創新聞作り」を用いたのは,「デザイン思考」と「システム思考」の接点を探るためです。
佐藤先生曰く,デザイン思考とは「革新性」とも言い換えることができ「ありたい姿からイメージする」アプローチのことです。一方,システム思考は「実現可能性」とも言え,現在保有するリソース(資源・機会・能力)をもとに統合的な問題解決に向けて論理的に考えることを指しています。どちらか一方のみでは,「目指すべき星の実現」には達することができず,2つの思考を往還することが重要です。
そのために必要な手法が「未来共創新聞」です。デザイン思考で思い描いた「姿」を新聞という形式でアウトプットする過程で「5年後新聞で取り上げられる記事にするにはどうすれば良いのか?」というシステム思考を働かせます。 今回の研修のねらいはここにあります。
最高気温を超えた?!白熱の会議室!
今回は、教職員だけでなく、在校生の保護者(PTA)や卒業生(OB・OG)にも参加いただき、「探究×部活動」「探究×キャリア・受験」「探究×学習活動」「探究×学年横断」「探究×教科横断」の6つのテーマに分かれてワークショップ開始!しかし、「探究」と与えられたテーマをどのように掛け合わせるかについて、すぐに明確な答えを見つけることは困難でした。これはまさに、佐藤教授が前回の研修で教えてくださった「答えのない問い」に挑む難しさを実感する機会となりました。まさに、”知的修羅場の経験”です。
それでも、各グループでは「こんな資格あるよ!」「それいいかも!」「うちの生徒だったらこんなこともできるんじゃない?」「うんうん、実現したいね!」と議論が大白熱。純真高校の未来を思い描く参加者の熱気が、会場となった会議室に満ち溢れたのでした。
休憩を取るのも忘れ、熱中しすぎて1時間があっという間に経過。出てきたアイデアはストーリー性を持った新聞の記事にまとめ、12枚の「純真高校未来共創新聞」が完成しました。12枚の掲示された新聞はどれもきらきらと輝いていたように見えました。
最後は、各グループが作成した新聞とそこに込めた思いを熱くプレゼン。年代、教科、所属を超え、学校が一体となった瞬間でした。その後、参加者全員に3色(緑・赤・青)の付箋が配られ、他のグループの記事に対して感想を共有。緑は「実現可能性」、赤は「革新性」、青は「アイデア」を示すもので、それぞれの付箋にコメントを書き、「ラブレター」と呼ばれる手法で意見交換を行いました。この方法は、佐藤教授が大学生とのコミュニケーションで活用しているものです。
白熱のうちに幕を閉じた第2回の職員研修。研修終了後、自分のグループに届いた「ラブレター」を熱心に読む参加者の姿が印象的でした。
そして,この日もう一つ印象的だったのが,本校の教職員をはじめとした本校に関わる皆さんは「デザイン思考」が強いということです。各グループ思い思いに「ありたい姿」を想像し,革新的なアイデアを出していました。
前進、純真。一歩ずつ!
第2回の職員研修はここで終わりましたが、次の課題が提示されます。それは、各グループで作成した新聞からキーワードを抽出し、『純真高校、福岡、記事風、2029年7月1日』などの用語を生成AIに入力し、その生成技術を活用して「純真未来共創新聞」のAI版を作成することです。これは本校が「DXハイスクール」に採択されたことから、教職員が教育DXの理解を深めるための取り組みの一環です。
普段はあまりAI技術に触れる機会がなかった教員たちも、実際に使用することでその特性や活用法を学ぶことができました。
実際に7月1日の研修で作成したものと、AI版を比較してみましょう。生成AIを使うことでアイデアが具体化したり、それまでになかった視点やアイデアが入ったりと、新たな気づきもあったようです。
AI版の新聞が完成後は、再び「ラブレター」の手法を用いて、従来の手作り新聞とAI版を比較し、感じたことを共有しました。
次回の職員研修は「純真未来共創新聞」を基に「純真高校の未来像」を具体化していきます。
今回の研修ではデザイン思考よりの発想でその姿に迫りましたが,次回は本校の母体である純真学園の学園訓など本校がこれまで大切にしてきた資産を基に発想を展開していきます。これはまさしく佐藤先生がおっしゃっている「デザイン思考とシステム思考の往還」と言える取り組みになりそうです。