SSDSEを活用する純真高校の学び:探究的な学びの土壌づくり
DXハイスクール(特色化・魅力化型)として認定されている純真高校では、SSDSE(教育用標準データセット)を用いた学びを全学的に導入します。数値という客観的なデータを「共通言語」として共有・活用することで、多様な他者との探究的な学びをより深められると考えているからです。また、これからの社会で求められる「文理横断的な学び」や「文理融合」といった考え方や、文部科学省の言う「デジタル人材」の育成にもつながると考えています。

データが溢れる社会
現代社会においては、様々なところでデータが重んじられています。ビジネス、スポーツ、教育…1次産業、2次産業、3次産業…どの分野においても、データの活用が進んでいます。
それは、データが他者や自己といった捉えにくいものに輪郭を与え、それを対象化し、分析することを可能にするからです。一口に顧客と言っても様々ですから、闇雲にその全貌を捉えようとしても、何だかよく分からない何かとしてしか捉えることができません。しかし、そのデータをとって見ると、「よく分からない何か」の傾向や実態が見えてくるはずです。朝の購入件数が増えていれば、朝に多く買われている商品の傾向を分析し、購入件数の多い時間帯に売れる商品のアイデアも出てくるでしょう。
そのようなデータで溢れる社会に向けて、データ活用について学ぶことは、社会に出る前の準備として、とても大切なことです。生徒自身も、同じように現代社会に生きているので、データが大切であるということを感覚的に分かっていますし、そういう視点を意識して学んでいる生徒も増えたように感じています。
ただ、その一方でデータが嫌いな生徒、データに対して苦手意識がある生徒も多いです。それは、データというものが、そこに関係性が見えなければ、ただの数字の羅列でしかないからでしょう。生徒の興味・関心を重んじ、自ら学ぼうとする姿勢を育むには、Step by Stepで取り組む必要があると考えています。

データを活用した学びも、Step by Step
突然、何行何列にもわたる表を見せられて、目を輝かせる生徒は稀です。そういう生徒は、どんどん自ら学んでいきます。それはすでにデータに対する興味・関心が備わっているからでしょう。
しかし、多くの場合は違います。データに対して苦手意識をもっている生徒も多いです。そこで、純真高校としては、データを用いた学びをいくつかの段階に分けて、各教科での学びを活かしながら、一歩一歩、取り組んでいこうと考えています。
データに関する学びは、主に以下の3段階で構成されます。
①データの解釈について学ぶ
②データの加工について学ぶ
③データの活用について学ぶ
①の段階は、すでにグラフ化されたデータの解釈を学びます。情報や社会といった教科だけでなく、国語でも、例えば文章検定では、こうしたグラフの読み取りないし解釈を問う問題が出題されているように、すでに関係性が明確なデータを正確に言語化できるか、そこから何が言えるか、どう意味づけられるかということが重要視されています。数学で学ぶ「外れ値」といった考え方も重要になってきますね。
②の段階は、例えば、表形式のデータを棒グラフにするといったような技能を学ぶ段階です。ここで重要となってくるのは、グラフへの理解です。こういうことを示したいのであれば、こういうグラフが適切であるといった知識ないし理解が必要です。これは、主に数学や理科などで学ぶことが多く、実際に加工する際には情報という教科で行われることが多いです。
③の段階は、一見「数字の羅列」のように見えるデータを前にして、そこに関係性を見出して、データを加工し、言語化するといった段階です。「総合的な探究の時間」において、自分が解決したい課題や、実現したい未来を示すために、自ら観点を設定して行う場合もあれば、「社会」や「理科」あるいは、「保健体育」や「家庭科」の授業で設定された課題を解決する根拠として用います。根拠というところを主眼とする場合であったり、①②の段階がまだ十分でない状態であれば、AIを活用することも有効です。
便宜上「①データの解釈」「②データの加工」「③データの活用」としましたが、これらの段階は互いに行き来しながら、つまり往還しながら学び、徐々に精度を上げていくようにします。そちらの方が、何のために学んでいるのか、「学ぶ意味」を見出しやすいからです。
SSDSEの素晴らしさ
そこで重要になってくるのが、どういうデータを用いて学ぶかということです。一般的なオープンデータソースを用いようとすると、どうしても、データ整形に時間や体力を奪われてしまい、データから社会の傾向や課題を読み解き、自分の考えをまとめるという目的が達成されにくくなります。
しかし、SSDSE(教育用標準データセット:Standardized Statistical Data Set for Education)は違います。SSDSEとは、総務省が所管する独立行政法人「統計センター」が提供している、極めて信頼性の高いデータの集合です。すでにデータ整形が完了したデータであるため、そこに時間や体力を奪われることもなく、本質的な学びに注力することができます。
また、SSDSEには、人口・世帯・経済・教育・医療・福祉・住居など、多岐にわたる分野の指標があらかじめ同じフォーマットでまとめられています。したがって、「教育費の高さ」と「大学進学率」の関係や「高齢化率」と「可燃ごみ排出量」の関係を比較しやすくなっているのです。一般のオープンデータでこれを行おうとすると、別々の省庁や自治体からデータを集め、自治体コードで紐づける作業が必要ですが、SSDSEなら1つのファイル上で異なるジャンルの相関関係を即座に視覚化・分析できます。
さらに、SSDSEは、全国47都道府県や全1,700以上の市区町村のデータが網羅されています。自分の住む地域を「全国平均」や「似た規模の他地域」と比較でき、主観的なイメージではなく、客観的な数値(根拠)に基づいて自地域の強みや課題を発見することができます。地域課題をテーマにした探究学習において、根拠のある仮説を立てるための強力なツールとなると言っていいでしょう。
授業実践:AI×データで生き残れ! 18歳からの地域戦略プレゼン
この授業は、来年度18歳成人を迎える生徒たちが、若き「自治体コンサルタント」として、データに基づき地域の課題(ピンチ)を発見し、AI技術という武器を使って解決策を提案するという、純真高校の授業実践です。
以下が、AIを用いて整理したその授業内容になります。
授業の流れ
・自分の調べたい都道府県を決定
・SSDSEデータから「生産年齢人口」「高齢者数」「高齢化率」を抽出・Canvaを用いてグラフ作成
・データから読み取れる課題
・AIをどのように活かすか?
活用したデータとツール
データを用いた客観的な根拠(エビデンス)と、それを効果的に伝えるための以下のデジタルツールを組み合わせて活用しました。
- SSDSE(教育用標準データセット): 総務省統計局提供の公的データを使用。人口構成、有効求人倍率、最低賃金、生活コストなどの膨大な数値から地域の実態を抽出しました。
- デザインツール(Canvaなど): 抽出した複雑な数値を、Canvaのグラフ作成機能やインフォグラフィック要素を活用して視覚化しました。
取り組みの重点(スライド作成の際のポイント)
「知識の活用」と「自分事化」を促すために、以下の3点に重きを置いて構成しています。
- 【分析】地域の「リアル」診断(エビデンスの提示): SSDSEの数値を引用し、Canvaで作成した見やすいグラフを提示。「将来、この街で何が困りそうか?」という問いに対し、主観ではなく客観的根拠に基づいた分析を行いました。
- 【提案】AIで「ピンチ」を「チャンス」に(知識の活用): 教科書の知識を使い、AIに代替されにくい感情やコミュニケーションの重要性を踏まえ、地域の課題を最新技術でどう解決するか、独創的なアイデアを提案しました。
- 【決断】ワタシの未来とスキルの宣言(自分事化): 「都会で働くか、地方で働くか」という人生の選択を、データの裏付けを持って決断。AI時代に生き残るために今から磨くべきスキル(創造力や対話力など)を自分の言葉で宣言しています。
指導上の工夫
生徒が論理的に考え、かつ説得力を持って伝える力を養うため、以下のルールを徹底させました。
- 直感的なデザイン: 文字を減らし、グラフやアイコンを多用することで、複雑な社会課題をシンプルに伝えるデザイン力を磨きました。
- 教科書と社会の接続: 学んだ用語(情報の非対称性、PL法、CSRなど)を、スライド内の具体的な不祥事対策やトラブル解決の武器とし、生きた知識としての定着を図りました。
生徒の成果物



授業実践者の振り返り
課題膨大な統計データを扱う上で、現在は、NotebookLMに全データ(SSDSE)を取り込み、授業プリントで示したプロンプトを生徒が入力して、情報の収集と分析を行っていますが、課題もあります。というのも、AI(NotebookLM)からの回答が膨大になりすぎてしまい、生徒が情報の取捨選択に困る場面が見受けられるからです。生徒が授業の狙いに注力できるよう改善していきたいと考えています。
私としては、こんな面白い授業をつくってくれる先生と面白がってくれる生徒に感謝です。今後も純真高校の授業実践とその背景について発信していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。
投稿者プロフィール
- 教頭 兼 高校魅力化推進部部長 男子バスケットボール部顧問
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